ご紹介する本:「うつ」の効用 -生まれ直しの哲学-(泉谷閑示)
はじめに
お読み下さってありがとうございます!
突然ですが、あなたは「生きるのがつらい」と思ったことはありますか?
それとも今現在、生きることの悩みを抱えていますか?
もしも、その悩みが仕事によるストレスやプレッシャーなら、この一冊を読むことで人生が少しでも楽になるかもしれません。
私自身、仕事が辛すぎて少しでも早く引退したいという焦りから、去年に暗号資産のトレードにのめり込み、最終的には3,000万円を超える損失を出し、借金を背負うという生き地獄を味わいました。
普通のサラリーマンの身では、一生かけても取り戻せないかもしれない大損失⋯⋯。
自由に生きたいという夢そのものも崩壊し、私は打ちのめされ、生きる気力を失っていました。
自分の蒔いた種とはいえ、さすがにボロボロの精神状態だったため、一睡もできず、仕事の欠勤もしばしばでした。
そんなゾンビ状態の頃、たまたま書店で出会った一冊が本書でした。
本書はタイトル通り「うつ」がメインテーマであり、著者は精神療法クリニックの院長として、多数の「うつ」を完治に導いてきた長年の臨床経験の持ち主です。
しかし「うつ」に限らず、現代社会で生きづらさを感じる人にはヒントとなる記述が多く、私自身どん底の時期を本書に救われたと思っています。
本書の要点
本書の要約文を、背表紙から引用させていただきます。
『うつは今や「誰でもなりうる病気」だ。しかし、治療は未だ投薬などの対症療法が中心で、休職や休学を繰り返すケースも多い。本書は、自分を再発の恐れのない治癒に導くには、「頭(理性)」よりも「心と身体」のシグナルを尊重することが大切と説く。つまり、「すべき」ではなく「したい」を優先するということだ。それによって、その人本来の姿を取り戻せるのだという。うつとは闘う相手ではなく、覚醒の契機にできる友なのだ。生きづらさを感じるすべての人へ贈る、自分らしく生き直すための教科書。』
私が本書を読み、大きな気づきとなったのは、具体的には次の3点です。
✅ うつは心のSOS! 心の声に耳を傾けよう!
✅ 組織に適応できなくても問題なし!
✅ 「死にたい」は「生きたい」の裏返し!
この3点について、以下では私なりの解釈を含めて順番に解説していきますね。
私が気づいたこと
✅ うつは心のSOS! 心の声に耳を傾けよう!
人が「うつ」になる理由は何でしょうか?
その原因は一つではありませんが、本書では「頭」に対する「心と体」のストライキという見方でそのメカニズムを解き明かしています。
①人間は「心と体」そして「頭」で成り立っています。
このうち「心と体」は生物として自然なもので、「いま」に焦点を合わせ、「~したい」という行動基準によって動いています。
一方で「頭」は人間の進化過程で肥大化してきたもので、「未来」に焦点を合わせ、「~すべき」という行動基準によって動いています。
②高度情報社会である現代では「頭の働き=すべきこと」ばかりが重視・美化されており、「心の働き=したいこと」が軽視・無視される傾向にあります。
本心では自分がやりたくないと思っている仕事を「お金のため」「将来のため」などの理由でいやいや続けているのは、「頭」が「心」の声にフタをし、抑圧している危険な状態といえるでしょう。
③「頭」によるコントロール力が強く、「心」の声が無視され続けた場合、「心」とリンクしている「体」が体調不良など実力行使のストライキを起こすことで「頭」の命令を強制的にストップしようとします。
以上の流れでいう③が「うつ」の正体です。
心の方は「こんな生活いやだよー」「このままだと潰れてしまうよー」と主張しているのに、頭の方はなかなかそれを聞き届けようとしません。
このように心=体と、頭とが対立してしまうことが「生きづらさ」の原因となるのです。
ここで重要なのは、「心」は「頭」よりも、ほとんどの場合において本質的かつ重大なメッセージを投げかけてくるという事実です。
心の働きは直感的で、その判断を言語化しづらいです。
理詰めのステップを踏む必要がある頭とは異なり、「直感的に(中略)本質を見抜き、瞬時に判断を下」(p.24)すことさえ可能なのです。
考えてみてください。
・朝は身体の疲れが取れるまで、心ゆくまで眠っていたい。
・好きなことを、毎日自分の好きなだけやっていたい。
・自分の苦手な人、嫌な人とは一生顔を合わさずに暮らしていきたい。
これって全部、ごくごく当たり前の感情だと思いませんか?
実際はサラリーマンだから、耐え忍ぶことが当たり前になってしまうだけです。
もちろん、安易な脱サラをおすすめするわけではありません。
しかしストレスが耐えられる程度なら問題ないかもしれませんが、許容量を超える場合には、生き方を改めて考え直す必要があるかもしれません。
このように「うつ」は仕事を阻害するマイナスのものではなく、むしろ生き方を考え直すメッセージというプラスの役割を持つことがわかっていただけると思います。
✅ 組織に適応できなくても問題なし!
社会では、とくに集団の和を重んじる日本の組織では、とにかく協調性やコミュニケーション力が重視され、もてはやされますよね?
確かに、組織にとっては「扱いやすい」人材の方が好まれるのは無理もないです。
ですが、それは社会に対して価値を提供できることとイコールではありません。
Apple創業者のスティーブ・ジョブズやアインシュタインなど、偉業を達成した人はある意味では奇人・変人といえる人の割合が高いです。
会社や組織にいつまでも馴染めず、浮いてしまっている。
周囲とコミュニケーションが取れず、いつも上司や得意先に怒られてばかりいる⋯⋯。
私自身がそういったタイプで、コミュ障の自分が嫌いで仕方ありませんでした。
しかし、そのような瑣末なことで自己嫌悪する必要は無いことを本書は教えてくれます。
例えば、「適応」とは「麻痺」の別名(p.127)という言葉があります。
組織に馴染めず仕事を休んでしまうなどの「適応障害」は、適応に失敗した本人に責任があるかのようなネガティブなイメージで捉えられがちです。
しかし「適応」という言葉の裏には「苦痛」という本音が隠されています。
仕事に「苦痛」がなければ、適応の必要はありませんからね。
「鈍感力」という言葉がありますが、理不尽な組織に対して、自分の感覚を麻痺させ、鈍感になることを「適応」と呼ぶことは、非常に危険なことだと思います。
短期的には、だましだましで乗り切る場面も人生では必要だと理解できますが、長期的な無理は決して続きしませんからね。
そして、適応=麻痺が苦手なマイノリティの方ほど、繊細で鋭敏な感覚を持っていることが多いとも著者は述べています。
もしあなたがそういったタイプであれば、あなたには別の分野、あなたの心が本当に「したい」と欲する分野において、飛び抜けた成功を掴める可能性が高いでしょう。
✅ 「死にたい」は「生きたい」の裏返し!
投資に失敗し、急坂を転げ落ちるように損失を増やす日々⋯⋯。
落ちるところまで落ちて、借金だけが残り、それでも嫌な仕事が毎日襲い掛かってくるという人生の大底⋯⋯。
希望を全て失っていた私でしたが、そのときの私の心理も本書は掬い取って、救い上げてくれました。
以下は、いわゆる躁うつなど古典的なうつとは異なり、もともと深い自己否定や自己愛の欠如といったパーソナリティの問題を抱え、慢性的に死にたい、生きづらいと感じている人に対する言葉です。
「うつ」に限らず、本書で私に最も深く刺さった箇所なので以下に引用します。
『このようなタイプの方たちはもともと高い感受性と内省力を備えていることが多く、然(しか)るべき質を備えたサポートが行われさえすれば、病的な方向に発揮されてしまっている生来の資質も、その人のかけがえのない美点として開花するところまで到達することもできるのです。私はこれまでの臨床経験から、「本人が持て余している能力が症状に転化されているために、それだけ症状が派手になっているのではないか」という印象を持っています。
この観点からすれば、このタイプの方たちの「死にたい」という願望の激しさは、その奥に「自分らしく生きられるのならば、生きたい」という強烈で痛切な叫びが潜んでいると見ることができるのです。』(pp.94-95)
初めてこの文章を読んだときには思わず鳥肌が立ちました。
「死にたい」とは「生きたい」の裏返しだと、気づかされたからです。
実際に数多い臨床経験をしてきた著者だからこその、強い説得力を感じます。
もちろん、これはリストカットが常態化しているなど、私とは比べものにならないほど「生きづらい」方を念頭に置かれた文章です。
自分程度の絶望は、まだ生易しいのかもしれません。
しかし、この気づきをきっかけに、私は投資を始めたきっかけである「自分の人生を、自分らしく生きたい」という原点を思い出すことができたのです。
目標実現は遠のいたけれど、目指すべきゴールは少しも変わっていない。
そう認識できたことが、私がブログを始めるきっかけにもつながったのです。
まとめ
以上、この記事では『うつの効用 -生まれ直しの哲学-』 という一冊を読んで、感想と解説を中心にお届けしました。
冒頭で少し触れましたが、本書のテーマはあくまでも「うつ」であり、この記事で紹介できたのは全体内容のわずか2〜3%程度に過ぎません。
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👉「うつ」ではないが、生きづらい。
👉「うつ」で職場を休職している。
👉ストレスの多い職場で「うつ」になるリスクが高い。
👉家族や同僚が「うつ」で接し方に悩んでいる。
👉毎日が苦痛で、生きていても仕方ないと感じている。
👉努力や自己管理をせずにはいられない性格だ。
このような方には非常におすすめできる一冊です!
私自身は、精神科医にかからなかったので「うつ」の診断は受けていませんが、いつ「うつ」と診断されても不思議ではない状況を経験してきています。
また、職場や社会で「うつ」や適応障害の事例がどんどん増えているため、その意味でも必読だと感じました。
ぜひ、本書をお手に取っていただければ嬉しいです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
本書の目次
まえがき
第一章 「うつ」の常識が間違っている
1 「うつ」は心の弱い人がかかるもの?
2 「うつ」は、自覚できるとは限らない
3 「うつ」の人が遅刻や無断欠勤を繰り返すのは、責任感が足りないから?
4 遊びには行けても、会社には行けない --これは本当に「うつ」なのか?
5 「うつ」で休職中の私が、なぜ遊びに行けるのか?
6 「うつ」になりやすいタイプ--病前性格について
第二章 「うつ」を抑え込んではいけない
7 イライラは「うつ」が悪化している兆候なのか?
8 「眠れない」とはどういうことか?
9 新しい「うつ」に見られる自傷や過食の衝動
10 なぜ、「死にたい」と思うのか?--「うつ」と「自殺」の関係
11 「努力」に価値を置く危険性--「うつ」を生み出す精神的母胎
第三章 現代の「うつ」治療の落とし穴
12 「うつ」を「心の風邪」と喩えることの落とし穴
13 クスリに頼るのではなく、クスリを活用する
14 「試し出社」で会社アレルギーは消える?--段階的復帰プログラムの問題点
15 「適応」とは「麻痺」の別名--「適応障害」をめぐって
第四章 「うつ」とどう付き合うか?
16 間違っていませんか?--「うつ」への接し方
17 「うつ」の人には余計な一言?--外出や運動の勧め
18 逃げてはならない?--「うつ」の人によく向けられる精神論
19 恵まれているからこそ--世代間ディスコミュニケーションの背景にあるもの
第五章 しっかり「うつ」をやるという発想
20 「昼夜逆転」現象のナゾ--なぜ「うつ」の人は朝起きられなくなるのか?
21 何をやっても長続きしないのはなぜか?
22 「早く職場に戻りたい」--偽装された願い
23 「うつ」は“闘って”治るもの?
24 「何をやりたいのか分からない」--「うつ」の人に限らない現代人の悩み
25 夏目漱石の方法--「自分がない」空虚な状態から脱出
第六章 「うつ」が治るということ
26 現代人に蔓延する「ゾンビ化」現象
27 いまを生きよ--「パニック障害」の告げるもの
28 死んだ食事と「うつ」のメンタリティ--ガソリン補給のためだけに食べる人々
29 何もしない時間の欠乏--「有意義」という強迫観念
30 「自己コントロール」のワナ
31 「うつ」が治るとは新しく生まれ直すこと
32 「うつ」は覚醒の契機である
旧版の おわりに
新版のあとがきにかえて 「目に見えぬもの」と私たち
(本文260ページ)