9割うまくいかないカップルの話(後編)

心理学


書籍紹介:異性の心を上手に透視する方法 原題:Attached
(著:アミール・レバイン/レイチェル・ヘラー 訳:塚越悦子)

はじめに

 お読み下さってありがとうございます!

 皆さんは、恋愛や結婚、離婚について悩みを抱えていますか?
 例えば、「好きになった相手がいつも浮気を繰り返す」「誰かと付き合い始めても、すぐに飽きてしまう」「愛し合って結婚したのに、毎日口論が絶えずにしんどい思いをしている」…

 このような「うまくいかない」カップルの組み合わせは、実はあらかじめ決まっていると聞くと、不思議に思われるでしょうか?
 本書は、まるで恋愛ハウツー本のような邦題とは裏腹に、至ってまじめな心理学理論に基づいた良書となっています。

 前回の記事では、私の人生を変えてくれたこの一冊を取り上げ、イギリスのジョン・ボウルビィ博士(John Bowlby)による「愛着理論」を元に、人間のパートナーシップを規定する「愛着の3タイプ」について紹介しました。
 愛着の3タイプとは、大きく次の3つに分けることができます。

 ✅ パートナーへの依存度が強い、不安型(Nタイプ)
 ✅ パートナーと親密になれない、回避型(Vタイプ)
 ✅ パートナーと問題なくやれる、安定型(Sタイプ)

 それぞれの特徴については、前編で詳しく取り上げましたので、未読の方はぜひご一読いただければ幸いです。

理想の関係を手に入れるには?

 今回の記事は、前編で紹介した3タイプを踏まえ、どうすれば良好なパートナーシップを築けるのかについて考えていきますので、ぜひお付き合いください。

「NVの罠」を避ける

 冒頭で「うまくいかない」カップルの組み合わせは、あらかじめ決まっているとお伝えしました。

 結論から述べますと、最も相性の良くないのはNタイプとVタイプの組み合わせです。
 水と油というと言い過ぎに聞こえるかもしれませんが、両者の愛着的ニーズは「親密さの極大化」「親密さの極小化」と真逆に等しいため、妥協点を見出すのは容易なことではありません。
 親密なパートナーシップの中央値を仮に50とした場合、Nタイプの人が求める親密度は60~100、Vタイプの人が求める親密度は0~40くらいではないでしょうか(個人の感覚です)。

 Nタイプの人が、相手に心理的に近づこうとすると、Vタイプの人はそれを瞬時に察知してますます距離を取ろうとします。
 Vタイプの人が離れようとすると、Nタイプの人は離れさせまいとして、ますます心理的に接近しようとします。

 ・ベッドを一台にしたいNタイプに対し、ベッド二台を譲らないVタイプ。
 ・どんなことでも話し合いたいNタイプに対し、突っ込んだ話し合いは避けたいVタイプ。
 ・財布の紐を一つにしたいNタイプに対し、夫婦別会計を主張するVタイプ。
 
 このように恋愛や結婚生活の至るところで、両者の考え方の相違が噴出しますが、問題の真の原因は、ベッドの台数など表面的な問題ではなく、愛着スタイルの不一致なのです。

 しかもここで注意すべきなのは、相性は良くないにも関わらず、NタイプとVタイプは互いに引かれ合う関係にあることです。
 単純に自分の持っていない特徴を持っている相手が魅力的に映るということもありますし、Vタイプの人は「自分が必要とされている」、Nタイプの人は「相手は自分にとって必要なのだ」という錯覚を、愛と勘違いしてしまうことも大きな理由でしょう。

 NとVの組み合わせは、カップル成立率が高く、結婚まで進むと意外にも離れづらいのです。
 けれどもNタイプの人は相手の回避傾向、Vタイプの人は相手の依存傾向をますます助長させてしまう性質があるので、本書でいう「愛情のブラックホール」(p.171)という表現は決して大げさではないことが分かってもらえると思います。

 不安定な愛着スタイルであっても、Nタイプ同士のカップルなら、激しいケンカをしつつも末長く一緒にやっていくことは可能でしょう。
 またVタイプ同士のカップルはそもそも成立しづらく、仮に成立しても自然消滅で終わってしまいがちですが、双方承知の上での仮面夫婦、双方の浮気公認など、既存の枠にとらわれない在り方を見出す方法はあると思います(子育ての難易度は高いですが)。

 一般的にイメージされる家庭生活を営みたい場合、Sタイプの協力がほぼ不可欠となってきます。
 Sタイプの人は相手の愛着的ニーズにある程度まで合わせられる柔軟性があるからです。
 先ほどの数値の例でいえば、Sタイプの人が対応できる親密さは20~80くらいだと思います(Sタイプの中にも、依存寄りと回避寄りのパターンがあります)。
 Sタイプ同士のパートナーシップが最も満足度が高いという調査結果には納得ですが、Nタイプの人もVタイプの人も、Sタイプの人と暮らすことで、努力をすれば、Sタイプに考え方が近づいていくと言われています。

Sタイプの考え方を取り入れよう

 どの愛着スタイルの人の組み合わせであれ、相手への思いやりを忘れないコミュニケーションは、パートナーシップにおいては不可欠となるでしょう。
 Sタイプの人にとっては無意識でも可能なことなのですが、NタイプやVタイプの人にとっても、意識的とはいえ真似することは十分に可能でしょう。

 しかしそのためには、最低限の心構えとして、Nタイプの人は「プロテスト行動」(前編参照)を控えること、Vタイプの人は依存を悪だという思い込みを捨て去ることが、最初のステップとなります。
 その上で、どちらのタイプにとっても「自分の要求をストレートに相手に口にすること」が必要不可欠となります。
 Sタイプの人は、自分の要求をパートナーに伝えることを躊躇しませんが、それはワガママなせいではなく、自分自身を大切にできているからです。
 要求を伝えた結果、相手が怒り出したり、まともに話し合いに応じないということは、その相手はあなたを大切にしてくれないということなので、見切りをつければ良いのです。

 このようにして理想的なパートナーに巡り会えた場合にも、様々な問題やケンカは起こり得ると思います。
 そのような場合の話し合いは「具体的な問題にフォーカスし、相手の人格を傷つけない」という態度を忘れないようにしましょう。
 NタイプやVタイプの人が、ストレスで取り乱してしまうことがあっても、Sタイプの人はあくまでも穏やかに接してくれるはずです。

まとめ

 以上、この記事では愛着スタイルの観点から、理想的なパートナーシップを築くためのヒントを考察してきました。
 私自身Vタイプですし、不安的な愛着スタイルの持ち主が悪人と言いたいのでは決してありません。
 それどころか、Nタイプの人はどんなことも手を抜かずにやり抜く、Vタイプの人は独創的な視点を発揮するなど優れた長所を数多く持っています。

 NタイプやVタイプの人は、幼少期や少年期にそれなりに辛い出来事(私の場合は肉親との死別等)を経験し、生きづらさの中で育まれた繊細さ、優しさを持っています。
 自身のコップに水が十分注がれていない人(愛着的に満たされてない人)が、パートナーに水(愛情)を分け与えるのは難しいですが、一度満たされてしまえば、どんな人であれ相手に分け与え返すことは可能なのです。

 親密さに対する偏ったニーズは、Sタイプの人と長い時間を共にすることで徐々にバランスの取れた方向へ向かっていくということがわかっています(わずか4年で25%の愛着スタイルが変化したとのデータもあります)。
 ですから、Sタイプの方も、本記事を読んでお相手がNタイプやVタイプだとわかっても、どうかすぐには見捨てないであげていただけると幸いです。
 適正なコミュニケーションを身につけたパートナーは、仕事に限らず、家庭生活においてもその長所をきっと発揮してくれることでしょうから。

 ⚪︎この記事の内容に共感していただいた方は…⚪︎

 <Amazonへのリンクここら辺に貼る予定>
 ※ワンクリックで、人生のヒントを見つけてみませんか?

 👉 恋愛をするたびに傷ついている。
 👉 どうせ自分には結婚なんて出来ないと思っている。
 👉 パートナーとの言い争いが絶えずに困っている。
 👉 家庭円満の秘訣が知りたい。
 このような方には間違いなくおすすめできる一冊です。

 愛着理論を知ることで、自分自身の恋愛のクセを理解し、もっと良い関係を築けるかもしれません。
 そんな気づきを得たい方は、ぜひ本書をチェックしてみてください!
 豊富なケーススタディなど実践的内容も多く含まれていますが、本文で取り上げることができたのは、ほんの一部でしかありません。

 それでは、最後までお読みくださり、ありがとうございました!

 <本書の目次>
1日目 99%の人が知らない事実 人は恋愛するとロボットのような決まった行動をする
1時間目 相手がどんな人かは、愛情タイプから簡単にわかる
2時間目 パートナーに依存する人ほど仕事がデキる理由
2日目 愛情体質診断 二人の関係は3つの愛情タイプの“組み合わせ”で9割決まる
3時間目 あなたのは、N、S、Vのどの愛情タイプ?
4時間目 相手の愛情タイプはどうすればわかる?
3日目 自分の取扱説明書 なぜ合わないタイプの人を好きになってしまうのか
5時間目 Nタイプ(不安型) 相手に振り回される人
6時間目 Vタイプ(回避型) 恋愛関係では満たされない人
7時間目 Sタイプ(安定型) “鈍感力”が心地よい人
4日目 愛情のブラックホール “最悪の組み合わせ”から抜け出すには?
8時間目 あらゆるけんかに共通するたった一つの“原因”とは
9時間目 Sタイプへの道--自分の愛情タイプを変える方法
10時間目 それでもうまくいかなかったらどうするか
5日目 100%幸せな結婚を手に入れるための10の習慣
11時間目 相手に気持ちが伝わる! 5つの習慣
12時間目 けんかを乗り切るための5つの習慣
エピローグ パートナーシップの3つの“嘘”とは
訳者あとがき
(本文284ページ)

タイトルとURLをコピーしました